JEITAのデザインワークショップに参加して分かった「共感」の難しさと「問題探索」の重要性
今回のミッションは「ワークショップ参加」
こんにちは、富士通デザインセンターのデザインアドボケート、横田奈々です!
今回は、2023年3月2日に東京・渋谷にある共創拠点「渋谷QWS」で開催された、「JEITAデザイン委員会」主催のワークショップ「JEITAエコシステムトライアル」に参加してきました。
前回の宇田さんとの対談から引き続き、「社会課題×デザインアプローチ」をテーマに、横田の仮説「デザインアプローチの8つのSTEP」を検証できたらと思います。特に「STEP1の問題探索の重要性」と、「STEP3の共感の難しさ」について気づきがありました!
そもそもJEITAデザイン委員会って何?
JEITAは、富士通など、IT/エレクトロニクス産業を中核とした業界団体「電子情報技術産業協会」。JEITAにはいろんな委員会がありますが、その中のひとつ、国内23社のデザイン部門が参画するデザイン委員会は今年度、「自社貢献に加え、より複雑化する社会課題のイシューを括りだし、企業の枠を超え異業種とのエコシステムを形成し、多様なクリエイティビティの力で課題解決する存在となる」と発表しています。
今回のワークショップの内容は?
今回のワークショップの目的は、エコシステム構築の第一段階、「企業の枠を越えてデザイナーが集まり解くべき問いを括り出す」を試すこと。渋谷QWSのプログラム、「問いを起点とした創発を体感してもらうワークショップ」を通じて、JEITAデザイン委員会に所属する各企業のデザイナーたちが、問いを括り出していきます。
ワークショップのテーマはあらかじめ設定されていて、40人ほどのデザイナーたちが5グループに分かれ、「どうすれば誰もが生きがいを持って日々を生きられるようになるか」の課題解決に取り組みました。
ワークショップではまず「クエスチョンストーミング」(ブレスト的なもの)を2回実施して、各グループがそれぞれ問いを設定。その後、個人で課題解決のアイデアを考えて、グループで共有し、最終的にプロトタイプを作成して発表するという4時間のプログラムでした。
実際にワークショップをやってみると?
私のグループは、インハウスデザイナー3人(Canon、コニカミノルタ、SHARP)と、学生1人の5人グループでした。2回のクエスチョンストーミングのあと、話し合いで出てきた、「自分の生きがいを他の人に話しにくい」という意見に着目。「自分の生きがいに自信を持つには?」をグループの問いに設定しました。
各自のアイデアを分類した結果、ワークショップのアウトプットとして、自信を持てないことに自信を持つための「負の生きがい褒め合い仮面舞踏会」というアイデアをプロトタイプすることに決まりました! (デザイナーのいるワークショップ、画力が高くて面白いのあるある)
というわけで、ワイガヤしながら架空の仮面舞踏会で身に着ける仮面のプロトタイプを5人分、5個つくりました! 余談ですが、メンバーの一人が小道具づくりの経験があり、「曲面をつくるには、マスキングテープを裏面にどう貼ればいいか?」などの技を持っており、とっても上手にできました!
最後に、寸劇を交えてアイデアを発表してワークショップは終了。4時間という短い時間でしたが、普段の業務とはまた違ったテーマで頭をフル回転したワークショップでした。(コロナ禍で社会人になったので、他社のデザイナーと一緒にワークするのは初めて。自分の実力が試されそうで、実は超ドキドキしてました。あと、ワークしつつ動画を撮影するのは難易度が高かったです)
ワークショップを終えて、家に帰った横田が考えたこと
気づき1:ステークホルダーから「共感を得る」ことは簡単じゃない
ワークショップでは、グループのメンバーの共感を得られればいいですが、実際の社会課題を解決するには、さまざまなステークホルダーがいるはず。つまり、より多くの人々から共感を得ることが重要です。
今回は、デザイナーという共通属性の人たちのグループだったこともあり、「人に言いにくいオタク趣味が生きがい」のように共通の課題感を持っていたり、理解があったりと共感しやすかったですが、例えば、「職種」「年代」「性別」「出身地」など、属性が多様になる=共通する認識や価値観も異なります。そのため、「共感を得る」ことは簡単じゃなさそうだと、改めて思いました。
ここで、「共感ってなんだろう?」となったので調べてみました。
社会課題×デザインアプローチの横田の仮説、「デザインアプローチの8つのSTEP」の「STEP3共感」においては、感情的側面と認知的側面から共感してもらう工夫が必要そうだと気づきました。心理学も、社会課題×デザインアプローチに重要な要素になりそうです、引き続き調べていきます!
気づき2:問題に対する探索と理解の重要性を再確認
今回のワークショップでは、横田の仮説「デザインアプローチの8つのSTEP」の「STEP1」に当たる探索と理解の時間はありませんでした。そのため、ブレストを2回行ったものの、情報の引き出しが少ない状態では、なかなかいいアイデアや意見が出ないと分かりました。実際に社会課題の問いをくくり出すためには、問題に対する理解や探索が必要だと改めて気づきました。
また、社会課題は自分もステークホルダーの場合が多いので、普段の生活の中での気付きを大切にし、蓄積しておくことが問題に対する理解の促進につながると思いました。
気づき3:デザイナーがプロトタイピングを楽しみすぎちゃう問題
これは問題とは言えないかもしれないですが、プロトタイピングなどのアウトプットをつくることが好きな人がデザイナーには多いのか、前半の問いのくくり出しと、後半のプロトタイピングを比較すると、前半にはあまりエネルギーが注がれてないように感じました。横田の仮説「デザインアプローチの8つのSTEP」では、問いのくくり出しにも、人起点で物事を考え続けるデザインの力を活かしたいと考えています。
十分なエネルギーを注いでもらうために、例えば、ワークショップの各フェーズにおいて、デザインのどういった側面を活かしてもらいたいのかを明示すると、上手く行くのではないかと考えています。
今回のまとめ
さまざまな企業のデザイナーが集まって、共通のテーマに対して問いをくくり出し、プロトタイピングまで一緒に取り組むことができたのは貴重な経験でした! そして、ワークショップを通じて、横田の仮説「デザインアプローチの8つのSTEP」においては、「STEP1の問題探索の重要性」と「STEP3の共感の難しさ」を再認識しました。
特に「STEP3の共感の難しさ」に興味を持ちました。そして共感は2つの側面があると調べる中で分かりました。今回のワークショップのテーマだと、「いや~、生きがいって言いにくいよね、私も~」という主観による感情的側面と、「生きがいを言いにくいと言ってる人、知り合いにいるわ!」のような認知的側面が共感を得るために必要ということでしょうか。
次回は、「STEP3の共感」をどのようにブラッシュアップできそうか、「多くの人々に共感してもらうには?」をテーマに、私の大学時代の友人であり海岸のゴミ拾いなど、環境アクティビティに取り組んでいる渡邉尚樹さんに話を聞いてみます!
ぜひお楽しみに!